薬はタンパク質に作用する

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さて、とても小さい物質である薬は、どこに作用して病気の症状を改善させる効果を示すようになるのでしようか。その多くは、タンパク質に作用します。

私たちの体の中で最も多い成分は「水」です。体の中の、約60~70%が水分であるとされています。

そして、次に多い成分がタンパク質です。タンパク質は、体の中の約15~20%を占めています。これは、細胞を形作るためにはタンパク質が必要不可欠だからです。

タンパク質がいくつも集まると、細胞を形成するようになります。細胞がたくさん寄り集まると、器官(臓器など)として機能するようになります。つまり、人間を作り上げるために必要なあらゆる細胞は、タンパク質によって成り立っているということです。

例えば、髪の毛や皮膚はタンパク質で構成されています。肺や心臓、肝臓、筋肉などもタンパク質の集まりです。

このタンパク質は、実はたった20個のアミノ酸から構成されています。食物に含まれるタンパク質はそのままの状態では吸収されず、タンパク質を構成する最小単位であるアミノ酸まで分解されます。アミノ酸が腸から吸収され、このときのアミノ酸を原料として体内でタンパク質を再構築するのです。

そして、アミノ酸が列車のようにいくつも連なっていき、何十個から何千個と組み合わさっていくとタンパク質と呼ばれるようになります。

つまり、タンパク質とは、「アミノ酸がたくさん繋がっている物質」ということになります。このとき、「アミノ酸がどのような順番で連なっていくか」、また「一列で連なったアミノ酸の鎖がどのような形で折りたたまれていくか」などによってタンパク質の機能が異なってきます。

このように、細胞などを作るために必要なタンパク質ですが、それ以外にも、赤血球や白血球などに含まれる「血球成分」、病原菌から身を守るための「抗体」、シグナルを伝えるための「ホルモン」など、タンパク質は生命維持に関わる多くの役割を持っています。

「生命に関わる」というと、DNAを連想される方がいるかもしれません。しかし、DNAは単に体を作るための設計図が刻まれているだけの存在です。このDNAに書かれている情報をもとにタンパク質が作られることによって、ようやく生理機能を示すようになるのです。

私たちの体内には数万種類ものタンパク質があるといわれています。これらのタンパク質が体の中で「血糖値を低下させろ」「血圧を上げろ」といった情報伝達を行っていたり、細菌・ウイルスに対抗したりしています。生命活動には、こうしたタンパク質の機能が大きく関与しているのです。

ほとんどの薬は、このタンパク質に作用します。そして、タンパク質の中でも、薬が作用する場所を「受容体」と呼びます。

(続く)

医薬品とは?

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薬はとても小さな物質です。どれくらい小さいかというと、数十個の原子から構成されているだけです。

高校の物理の授業では、「すべてを構成する物質の中で最小の単位は原子である」と習います。

厳密にいうと、この定義は正確ではありませんが、ともあれ、原子というものはとても小さな物質です。

例えば、酸素は酸素原子として「O」で表されます。窒素は窒素原子として「N」と表されます。ただ、実世界では酸素は酸素原子Oが二つくっつくことで酸素分子「O2」として存在しています。

窒素も、窒素原子Nが二つくっついて窒素分子「N2」として存在しています。これはもちろん、「酸素や窒素は原子二つから構成されている」という意味です。

ここでは酸素と窒素を例に挙げましたが、「すべての物質を構成する原子」が複雑に絡み合うと、さまざまな物質へと変化します。例えば、水や二酸化炭素は三つの原子で、炭酸は六つの原子で構成されています。

紙やペン、さらには空気中を漂っているチリやホコリなども、原子が複雑に絡むことで構成されている物質です。

人間も同様です。人間は60兆個の細胞で構成されているといわれています。

この細胞は何でできているのでしょうか。細胞も同じように細かく細かく分解していくと、最終的には原子にたどり着きます。そのため、私たちの体も突き詰めて考えれば「原子の集まりである」ということができます。

このように、原子は物質の構成要素であり、世の中に存在するすべての物質は原子からできています。

では、薬はどのような形をしているのでしょうか。高校の化学では、亀の甲羅のような形をした化学構造を習いますが、そのような構造式を描いて説明しましょう。

アスピリンは原子が21個集まることで「痛みや熱を抑える作用を持つアスピリン」としての形を作っています。

抗生物質のペニシリンは、原子が41個集まることで、「病原菌に対抗するペニシリン」としての形を作っています。

これらの構造式を厳密に理解する必要はありません。要は「薬というのは、いくつかの原子が集まって構成されている」ということを大まかに理解していただければそれで十分です。

では、原子21個のアスピリン、そして原子41個で成り立っているペニシリンはどれくらいの「大きさ」なのでしょうか。

私たち人間を構成している細胞も原子で成り立っていることは前述しましたが、たった一つの細胞でも「何百~何千兆個の原子で構成されている」といわれています。

それに対して、薬は数十個の原子だけで成り立っています。

こう考えると、薬がいかに小さな物質であるかを理解していただけるのではないかと思います。

薬は、このように少ない原子から構成される分子であるため、「低分子医薬品」と表現されます。

(続く)

薬剤師の役割が知られていない理由

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医師は、患者さんの病気を治療することが仕事です。

それに対して、処方内容から副作用などの問題が発生しないようにチェックするなど、「何も起こらないこと」を予測して仕事を行っているのが薬剤師です。

問題が起こらないように監視することが薬剤師の業務であるということは、薬剤師の役割があまり知られていない原因の一つでもあります。

そのせいでしょうか。薬や健康に関してちょっと相談したいと思ったときに「薬剤師を頼ろう」と思う人は少ないように思います。

現在、ほとんどの人は実際に病気を患ったときにのみ、医師などの専門家を頼ります。この考えを改め、病気でないときでも専門家を上手く活用すれば、より健康に過ごすことができるようになるでしょう。

セルフメディケーションの考えを取り入れ、薬剤師の力を借りながら自分自身で健康管理を行うことが大切です。

そのためには、専門家から必要な情報を引き出すために最低限の知識が必要になります。

「薬とは何か」という基礎的な概念を理解し、自分自身だけでなく、家族が服用する薬への理解を深めるためのツールとして当サイトを活用していただければ幸いです。

(続く)