病気の原因は分からない

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ここまでの説明で、薬が作用するときのメカニズムは理解できたと思います。

では、そもそも私たちはなぜ病気になるのでしょうか。残念ながら、世の中に存在するほとんどの病気の原因は分かっていません。

先ほど例に挙げたうつ病の患者さんの場合、脳内のセロトニンやノルアドレナリンの量が少なくなっているということまでは分かっても、では、なぜうつになるのか、というところまでは分かっていません。

病気を発症する要因というのは一つではなく、多くの因子が影響し合っています。うつ病の場合でも、生まれ持った「遺伝的な要因」、親しい人の死亡や結婚・育児などの「環境による要因」、ホルモンバランスの変化、感染症、がんなど「体が関係する要因」があります。これらがいくつも重なった結果としてうつ病を発症します。

これはうつ病に限らず、他の病気でも同様です。例えば、高血圧症患者の9割以上は原因不明です。高血圧を発症させる因子は肥満や塩分のとりすぎなどがいわれていますが、実際のところ、これといった原因はよく分かっていません。多くの要因が積み重なった結果、高血圧を発症するのです。

ただ、病気の原因のほとんどは不明ですが、中にははっきり分かる場合があります。こうしたケースでは、病気の症状を完全に改善させることが可能です。

例えば高血圧の中でも、体のある部分に腫瘍が生成され、この腫瘍から「血圧を上昇させる物質」がとめどなく分泌されることによって高血圧患者になるケースがあります。この場合は「腫瘍」という明らかな原因があるため、手術によって腫瘍を取り除けば高血圧は完治します。

これと同じように、感染症も明らかな原因が分かっています。感染症は病原微生物が原因となっているため、抗生物質や体に備わっている免疫機構によって病原微生物を退治できれば病気が治ります。例えば、性感染症の梅毒は、「梅毒トレポネーマ」という病原菌が原因であるため、この細菌を殺す薬を投与すれば治癒します。このように、病気の原因が分かっている場合に限り、薬による根本治療は可能です。

(続く)