受容体の「オン」と「オフ」

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薬は受容体の作用を「強める」か「弱める」のどちらかの働きをします。

「薬によって受容体の作用を弱める」場合というのは一体どういうケースでしょうか。ここでは鎮痛剤を例に挙げましょう。神経の損傷によって体に痛みが表れているときというのは、痛みに関わる受容体が過剰に興奮している状態だということです。そこで薬は、この痛みを引き起こす受容体を遮断します。これが神経痛の軽減につながります。

このように、薬は基本的に受容体を「強める」か「弱める」か、つまり「オン」にするか「オフ」にするか、話を単純化すればこの二つの役割だけで考えることができます。

薬と受容体の関係をより詳しく知るために、次に、「眠気を誘う薬(睡眠導入剤)」と「血圧を下げる薬(血圧降下薬)」についてみていきましょう。

脳が活動していないときというのは、「脳の活動を鎮める物質(眠りを引き起こす物質)」が分泌されています。それによって脳の機能が抑えられ、私たちは夜になると眠りにつくことができます。そして、睡眠導入剤も同じように、「脳の活動を鎮める物質」を分泌させることで眠気を誘います。

このとき、薬は「脳の活動を鎮める物質」の分泌に関わる受容体を「オン」の状態にします。これを、「受容体を活性化させる」といいます。この、睡眠導入剤が作用する受容体は「ベンゾジアゼピン受容体」と呼ばれます。ベンゾジアゼピン受容体が「オン」の状態、つまり活性化されることで、「脳の活動を鎮める物質」が多量に放出されるようになります。これが、睡眠導入剤が眠りを引き起こすメカニズムです。

では、「受容体を弱める」とはどういうことでしょうか。血圧を例に挙げます。血圧が上がる理由にはさまざまな要素がありますが、その一つに「血圧を上昇させる物質」の存在があります。この、「血圧を上昇させる物質」が受容体に作用し、「血圧を上昇させろ!」という指令が発せられるのです。血圧というのはこうして上昇します。

ただ、たとえ「血圧を上昇させる物質」が存在したとしても、この物質が受容体に作用しなければ血圧は上がりません。そこで、「血圧を上昇させる物質」が受容体に作用しないように、あらかじめ薬によって受容体をブロックするとどうなるでしょうか。

受容体は薬によって阻害されているため、「血圧を上昇させる物質」は受容体に作用することができません。これによって、「血圧を上昇させろ!」という指令が出なくなるのです。

血圧上昇に関わる物質に、「アンジオテンシンⅡ」と呼ばれる物質があります。この物質が受容体に作用する過程を阻害すれば、血圧を下げることができるはずです。受容体の作用を弱める「オフ」の状態にして、高血圧を治療するのです。

阻害薬のメカニズムというのは、これとすべて同じです。これが神経痛の治療薬であれば、「神経興奮によって痛みを発生させる受容体」を抑制することで、神経損傷による痛みを鎮めることができます。抗アレルギー薬であれば、「アレルギー反応を引き起こす受容体」を阻害することで、アレルギー症状を抑えることができます。このように、どの受容体に作用するかによって、得られる薬の効き目も異なります。

(続く)