うつ病とはどのような状態か

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「薬はどのようにして病気の症状を抑えるのか」を知ることができれば、「病気が起こっているときの体の状態」も理解することができます。

これまで説明した通り、薬というのは基本的に「受容体の作用を強めて」症状を抑えるか、または「受容体や酵素の作用を弱めて」症状を抑えるか、どちらかの役割しかありません。

このように見てくると、病気とは「ある特定の物質が極端に少なくなっている状態」、または「ある特定の物質が極端に多くなっている状態」だと考えられます。この状態を、薬が受容体や酵素に働きかけることによって足りない要素を補ったり、過剰となっている物質を阻害したりして改善するのです。

例えば、正常な人に比べて「ある特定の物質が少なくなっている状態」によって引き起こされる病気にうつ病があります。うつ病の治療薬は、不足している物質を何とかして補うことで、病気の症状を抑えようとします。

うつ病の有名な症状に、気分の落ち込みなどが起こる「抑うつ状態」があります。健康な人であっても気分が落ち込んだり暗い気持ちになったりすることはあります。しかし、健康な人であれば、たとえ一時的に気分が落ち込んでいたとしても、気分転換をしたり、時間が経ったりすることによって暗い気持ちから自然と回復していきます。

これがうつ病を患うと、強い抑うつ状態がずっと続いてしまいます。特に何の理由がなくても暗い憂うつな状態が継続してしまうのです。うつ病は心の病気ともいわれています。ただ、正確には、うつ病というのは脳の神経伝達物質の働きに異常が起こることによる病気であるといえます。

そのため、「気の持ちよう」や「気合い」などによって病気が治らないのと同じように、うつ病も適切な治療を行わなければ回復することも難しくなります。

私たちの脳は神経伝達物質によって情報のやり取りを行っています。この神経伝達物質の中には意欲や不安に関与している物質があり、このような神経伝達物質としてセロトニンやノルアドレナリンが知られています。うつ病患者には、脳内のセロトニンやノルアドレナリンが少なくなっているという共通点があります。そのため、これら神経伝達物質の作用を強めることができれば、うつ病から回復しやすくなります。

抗うつ薬はどれも「セロトニンやノルアドレナリンの作用を強めるように働きかける」という考えのもとに開発されています。薬が作用する細かいメカニズムは異なりますが、基本的に抗うつ薬が作用するときの考え方はどれも同じです。

ここでは、うつ病を例に「特定の物質が少なくなっている状態」を紹介しましたが、この「特定の物質が過剰または少なくなることによって病気が起こる」という考え方は多くの病気に共通します。うつ病の場合はセロトニンとノルアドレナリンと呼ばれる物質が重要になりますが、他の病気では、また別の物質の作用を薬によって強めたり弱めたりすることで病気を治療していくのです。

(続く)